1988年創業のハーブ工房HCCが、精油、ホワイトセージ、ハーブティー、猫とキャットニップ、サロンのおもてなし、香りと人にまつわる実話をご紹介しています。植物と香りを扱ってきた経験と、お客様から寄せられた声をもとにした読み物です。

ハーブ通信

日ざしはまだ強くても、風のなかにふと涼しさがまじる。夏から秋へ、季節は少しずつ移ろっていきます。 冷房の効いた室内と、外の暑さ。その行き来をくり返すうちに、身体が気温の変化についていけなくなる——そんな不調を感じやすいのが、ちょうど今ごろの時期です。 移り変わるこの季節を少しでも心地よく過ごし、日々の体調管理にも役立てられるように。今回は、暮らしのなかで頼りになるペパーミントのお話をしたいと思います。 暑い日の終わりに、ペパーミントリーフのお風呂を 汗ばむ一日の終わり。お風呂には入りたいけれど、湯上がりにまた汗をかくのは気が進まない——そんなふうに思う日があります。 そんな日におすすめしたいのが、ペパーミントリーフ(ペパーミントカット)を浮かべたお風呂です。 乾燥させたペパーミントリーフを、お茶パックや布袋に入れて浴槽へ。お湯に沈めると、爽やかな香りがやわらかく立ちのぼり、湯気とともにゆっくり広がっていきます。 精油ほど強くはありませんが、その穏やかさこそがリーフの魅力です。香りに包まれながら、肩の力がほどけていくような心地よさがあります。 面白いのは、湯上がりのひととき ペパーミントには、メントールという成分が含まれています。 メントールは、私たちが「冷たい」と感じる感覚に働きかける成分です。そのため、ペパーミントに触れたあとに風が当たると、ひんやりとした感覚がいっそう際立ちます。 湯上がりに扇風機やエアコンの風を受けると、肌がすっと冷えて、驚くほど爽快に感じられることも。暑さの名残る夏の終わりには、なんとも気持ちのよい入り方です。 ペパーミント精油は、たった一滴でも 私自身、ペパーミント精油(ペパーミントオイル)をお風呂で試したことがあります。 浴槽にほんの一滴。それだけで、湯気とともにペパーミントの香りがはっきりと立ちのぼりました。「精油とは、これほど凝縮されたものなのか」と、そのとき実感したのを覚えています。 ペパーミント精油は、とても力の強い精油です。たくさん入れればよいというものではなく、一滴で十分にその香りを味わえるほど。 なお、精油は水に溶けません。浴槽に使う場合は、一滴程度のごく少量から試し、一か所にまとまらないようにお湯をよくかき混ぜてください。ただし、かき混ぜても完全に溶けきるわけではありません。肌に刺激を感じたときは、すぐに使用を中止してください。とくに敏感肌の方やご高齢の方は、無理に精油を使わず、ペパーミントリーフでの入浴のほうが穏やかに楽しんでいただけます。 お庭がある方は、育てて使う楽しみを ペパーミントは多年草です。 乾きすぎない場所を好み、半日陰でものびのびと育ちます。環境が合えば横へ横へと広がり、葉にそっと触れるだけでも、爽やかな香りが立ちのぼります。...

以前、あるお客様に、漫画家の方のお話をしたことがあります。 その漫画家さんは、毎日、陰の世界を描いていました。仕事を終えるとローズオットーの香りを嗅ぎ、作品の世界から自分の暮らしへ戻っていく。そういう方でした。 その話を聞いたお客様にも、毎日続けていることがありました。 旦那様の腸ろうのために、ご自宅でチューブを使う処置をされていたのです。処置のときの匂いが強く、毎回、とても大変だったといいます。 その方は、処置を終えると、ローズ、イランイラン、プルメリアの香りを嗅ぐようになりました。 「これは、自分へのご褒美です」 そうおっしゃっていました。 処置の匂いを消すためではありません。旦那様のためにすることを終え、そこから少し離れ、もう一度自分に戻るための香りでした。 一人の漫画家さんが持っていた帰るための儀式が、話を聞いた別の方の暮らしにも、小さな帰り道をつくりました。 香りの話は、ときどき、人から人へ渡っていきます。 そして誰かが、自分に戻るための香りを、見つけます。  

ずいぶん前のことです。 HCCのお客様に、陰と陽の世界を描く漫画家の方がいらっしゃいました。 毎日、仕事として陰の世界へ入り、その世界を描き続ける。仕事を終えて自分たちの生活へ戻るとき、その方はローズオットーの香りを嗅いでいました。スタッフの方々も、同じように。 ローズオットーの香りを境にして、作品の世界を離れ、それぞれの日常へ帰っていく。それは、制作を続けるための大切な儀式だったのだと思います。帰るための儀式があったからこそ、安心して深い場所へ入っていけたのかもしれません。 やがて一冊の漫画が完成しました。その本は、この香りにまつわるお話とともに、HCCへ届けられました。 作者のお名前も、作品名も、ここには記しません。 けれど、もしあなたが陰と陽の間を行き来する物語を読むことがあったなら、少しだけ想像してみてください。その深い場面を描き終えた夜、作者とスタッフは一人ずつローズオットーの香りを嗅ぎ、静かに自分たちの暮らしへ帰っていったのかもしれない、と。 陰をなくせなくても、陰から帰るための道はつくれる。 あなたにも、帰るための香りがあるかもしれません。

夏休みのある朝、子どもが猫の前に、そっとおもちゃを置きます。 猫は近づくでしょうか。匂いを嗅ぐでしょうか。顔をこすりつけて、ごろりと転がるでしょうか。それとも、ちらりと見て立ち去るでしょうか。 一見すると、ただの遊びに見えるかもしれません。 けれど、これは世界の研究者が本気で調べている、れっきとした研究テーマです。そして、あなたの家の猫がどのような反応を見せるかは、どんな論文を読んでも書いてありません。 観察してみなければ、誰にも分からないのです。 この記事は、その「観察」を一夏の宿題だけで終わらせず、何年も続く小さな研究へ育てるための案内です。 読み終えるころには、親であるあなたの頭の中にも、いくつかの問いが浮かんでいるかもしれません。 キャットニップとまたたび キャットニップは、和名をイヌハッカというシソ科のハーブです。 葉や茎には「ネペタラクトン」という揮発性の香り成分が含まれています。これを感じ取った猫は、顔や頬をこすりつける、転がる、舐める、噛む、前足で触るといった行動を見せることがあります。 一方、日本で古くから親しまれてきたのが、またたびです。 欧米ではキャットニップ、東アジアではまたたびがよく知られていますが、猫によって、反応する植物も反応の仕方も異なります。 派手に転がる猫もいれば、静かに伏せる猫、匂いだけ確かめて立ち去る猫、ほとんど興味を示さない猫もいます。 その違いこそ、観察してみたいところです。 ここからは、この記事の中心となる「研究データ」を見ていきましょう。 プロの研究者が積み重ねてきた事実を、少していねいにたどります。子どもと一緒に読んでも、大人が一人で読んでも、新しい発見があるはずです。 【研究データ1】なぜ猫は、この香りに反応するのか 2021年、岩手大学などの研究チームが、猫の特徴的な反応に関係する仕組みを調べました。 またたびの主要成分の一つである「ネペタラクトール」を猫に提示すると、血液中のβエンドルフィンが増加しました。 さらに、μオピオイド受容体の働きを阻害すると、猫が顔や頭をこすりつける反応が弱くなりました。...

同じおもちゃ、同じおやつを出したのに、あの子は大はしゃぎで、この子は素通り。「え、そっち?」と、思わず笑ってしまう。猫といっしょに暮らしていると、そんな場面に出会うことはありませんか。 いっしょに暮らしていると、うちの子のことは何でも知っている気がしてきます。好きな場所、呼んだときの返事、甘えてくるタイミング。それでも猫の「反応」には、その子だけの性格がはっきり出ます。そして、それがいちばん分かりやすく現れるのが、キャットニップを出したときです。 「反応しないんだけど……」も、立派な答え 先に、よくいただく声から。「あげてみたけれど、うちの子は全然でした」「反応が薄くて、ちょっとがっかり……」。大丈夫です。それも、うちの子の「タイプ」のひとつです。 実は、キャットニップに反応するかどうかは生まれつき(遺伝)で決まっていて、3匹に1匹はもともと反応しないと言われています。効かないのは、飼い方でも、あげ方でもありません。その子がそういう子だ、というだけのこと。 つまり「反応しない」は失敗ではなく、ひとつの結果です。澄まし顔でスルーしていくマイペースなあの子も、ちゃんと個性を教えてくれています。だからこそ、面白い。出してみるまで、うちの子がどう出るかは分かりません。 反応でわかる、うちの子の「タイプ」 猫の反応は、だいたい次のように分かれます。あなたの家の子は、どれに近いでしょう。 ハンタータイプスイッチが入った瞬間、部屋を走り回る。飛びかかる、蹴る、また走る。狩りの本能が全開になる、元気な子。 甘えん坊タイプゴロンと転がって、体をこすりつけてくる。うっとりして、いつもよりぐっと甘えん坊に。 まったりタイプとろん、と力が抜けて、その場で幸せそうに脱力。静かに「ごきげん」を噛みしめる、癒やし系。 仙人タイプ匂いはかぐけれど、動じない。「ふーん」と一瞥して去っていく、マイペースな達人。 同じ家の兄弟でも、驚くほど違うことがあります。「上の子はハンター、下の子は完全に仙人」。そんな、我が家ならではの発見が、きっとあります。 見るのは、たった3つ むずかしい観察はいりません。おもちゃを出したあと、ここだけ見てみてください。 ひとつ、最初の一歩。すぐ飛びつくか、遠巻きに見るか、素通りするか。ふたつ、スイッチの入り方。走るか、転がるか、脱力するか。みっつ、戻ってきたあと。すぐ毛づくろいをするか、ぼーっとするか、甘えに来るか。 この3つを見るだけで、「うちの子は“走り回る、甘えん坊のハンター”」のように、その子だけのタイプが見えてきます。出す前に「うちの子はきっとこう出るはず」と予想してみるのもおすすめです。当たっても、外れても、それはそれで楽しい。予想と結果のギャップこそ、いちばん笑えるところです。 その日の反応を、残しておく 猫の反応は、その日の気分や体調でも、少しずつ変わります。今日は大はしゃぎでも、来年の同じ日は、案外そっけないかもしれません。だからこそ、見た反応をその日のうちに残しておくと、あとで読み返したときに、ちいさな宝物になります。 「今日は右前足で3回パンチ」「においだけかいで、5秒で去っていった」。そんな一行で十分です。書きためていくと、うちの子の“いつもの反応”が見えてきて、「あれ、今日はいつもより乗ってこないな」という小さな変化にも気づけるようになります。...

梅雨や雨の続く時期、花粉のシーズン。外に干せずに部屋干しをすると、あの独特の生乾きのにおいが気になる——そんな声をよくいただきます。共働きや一人暮らしで、日中に洗濯物を取り込めないご家庭も増え、部屋干しはいまや一年を通しての悩みになりました。 この記事では、部屋干しのにおいとどう向き合うか、そして香りをここちよく取り入れる方法を、香りの専門店の視点でご紹介します。 部屋干しのにおいは、なぜ起こる? 部屋干しのにおいの主な原因は、洗濯物に残ったわずかな汚れや皮脂を栄養にして増える雑菌だといわれています。外干しにくらべて乾くまでに時間がかかり、濡れている時間が長くなるほど、においが出やすくなります。つまり、においを抑えるカギは「早く乾かすこと」と「洗濯物を清潔に保つこと」です。 まずは「乾かし方」から 香りを取り入れる前に、まず土台を整えましょう。ここを飛ばして香りだけを足すと、においと香りが混ざってしまい、かえって気になることもあります。 ひとつ、風の通り道をつくる。洗濯物の間隔をあけ、扇風機やサーキュレーターで風を当てると乾きが早くなります。ふたつ、洗濯槽を清潔に。月に一度ほど洗濯槽を洗うと、においの元がたまりにくくなります。みっつ、ためこまず、早めに干す。濡れた洗濯物を長く置かないことも大切です。 そのうえで、香りを添えると、じめじめしがちな部屋干しの時間が、ぐっとここちよくなります。 そのうえで、すっきりした香りをプラス 部屋干しの空間に向くのは、甘く重い香りよりも、すっきりと澄んだ清潔感のある香り。空間を軽やかに感じさせてくれます。その代表格がティートゥリーです。 ティートゥリーは、ほかの何かに例えるのが難しい、独特の香りをもっています。柑橘でもフローラルでもなく、森の空気のように澄んで、すっきりとシャープ。じめじめした空気の中で嗅ぐと、すうっと気持ちが切り替わるような清潔感があります。 手軽な取り入れ方 洗濯物を干したお部屋で、アロマディフューザーにティートゥリーを4〜6滴たらして香らせるだけ。すっきりとした香りが空間に広がります。マグカップにお湯を張って2〜3滴落とし、洗濯物のそばに置く方法でも、ほんのり香りを楽しめます。柑橘系(レモン・オレンジ)やユーカリと合わせると、より軽やかで爽やかな印象になります。 ティートゥリーは、暮らしに寄り添ってきた香り ティートゥリーは、オーストラリアの湿地に自生するフトモモ科の植物です。原産地の先住民アボリジニの人々は、古くからこの葉を、暮らしのさまざまな場面で大切に用いてきました。その長い歴史をもつ植物が、いまはエッセンシャルオイルとして、世界中で親しまれています。 香りを楽しむというより、暮らしの中で活用したい——そんな理由で選ばれることが多いのも、ティートゥリーの特徴です。使い方の幅は広く、お掃除やお洗濯まわり、空間のリフレッシュなど、さまざまな場面で取り入れられています。 ▶ ティートゥリー精油を見る 組み合わせて楽しむのもおすすめ すっきりした香りが好みなら、ペパーミントやユーカリと合わせても好相性です。玄関や部屋の空間づくりについては、こちらの記事もあわせてご覧ください。...

玄関は、家の第一印象を決める場所。そして、外から帰った自分を最初に迎えてくれる場所でもあります。ここちよい香りを添えたいと思っても、「何を選べばいいのか分からない」という声をよくいただきます。 実は、玄関に香りを取り入れたい理由は、人によって違います。ニオイをすっきりさせたいのか、帰宅時にほっとしたいのか、空間を清めたいのか。この記事では、その「目的」ごとに、香りの専門店として選び方をご案内します。あなたの玄関の悩みは、どれに近いですか。 タイプ1:靴や生活のニオイをすっきりさせたい 玄関のニオイの主な原因は、靴に残った汗や皮脂、そして湿気によって増える雑菌だといわれています。まずは換気と掃除、靴箱に重曹や炭を置いて湿気を抑えることが基本。そのうえで香りを添えるなら、すっきりと澄んだ清涼感のあるペパーミントが向いています。 当店のペパーミントは、インド産。ミント特有の青っぽい香りが少なく、角の立たないまろやかな清涼感が持ち味です。こもりがちな玄関に、涼しい風が通り抜けるような明るさを添えてくれます。アロマストーンに1〜2滴たらして、玄関の隅や靴箱にそっと置くだけ。 ▶ ペパーミント精油を見る タイプ2:帰宅時にほっとしたい・来客をもてなしたい ラベンダーの香りには、不思議な力があります。ひと嗅ぎすると、そこが玄関でも、居間でも、寝室でもなく、いつのまにか「ラベンダーの世界」に導かれる——空間そのものを、やさしく塗り替えてくれるような香りです。帰宅した瞬間や、来客をお迎えする玄関に、ふっと安らぎの世界をつくりたい方に向いています。 穏やかに包まれたいなら:ブルガリア産 ブルガリア産のラベンダーは、穏やかで甘い、いわゆる「ザ・ラベンダー」の香り。やわらかく空間を包み込みます。 夏の玄関に、はっきり香らせたいなら:フレンチ産 フレンチ産は、カンファー(樟脳)由来のシャープさがあり、香りがくっきりと立ちます。特に湿度の高い夏の玄関では、穏やかな香りが埋もれがちなところ、フレンチのシャープさははっきりと香ってくれます。季節や気分で選び分けるのもおすすめです。 ▶ ラベンダー精油を見る タイプ3:玄関を「気の入口」として清めたい 玄関は、家の「気の入口」とも言われます。古くからネイティブアメリカンに神聖なハーブとして大切にされてきたホワイトセージは、空間を清めたいとき、気分を切り替えたいときに用いられてきました。パワーストーンのお清めや、瞑想の前の空間づくりにも使われます。 火や煙が気になるマンション・集合住宅では、ミストスプレーが手軽です。玄関や部屋の入口にひと吹きするだけで、ホワイトセージの澄んだ香りが空間に広がります。浄化のあとに、お好みでラベンダーやペパーミントの香りを重ねて、空間を整えるのもおすすめです。 ▶ ホワイトセージを見る...

「ラベンダーの精油を買おう」と調べると、ブルガリア産、フランス産と産地が分かれていて、どちらを選べばいいのか迷ってしまう。そんな声を、よくいただきます。 結論から言えば、どちらも同じ"真正ラベンダー"。優劣ではなく、香りの個性の違いです。1988年からラベンダーを扱い、両方を店に置いてきた専門店として、その違いと選び方を、正直にお話しします。 まず、ひとことで言うと ブルガリア産は、穏やかで、バランスのよい香り。角がなく、ふんわりとまろやかで、優しく包まれるようなラベンダーです。 フランス産(フレンチ)は、ややシャープで、すっきりとした香り。甘さは控えめで、軽やかなハーブ感があります。 同じラベンダーでも、「まろやかで穏やか」か「シャープですっきり」か。ここが、いちばんの分かれ目です。 なぜ、同じ真正ラベンダーで香りが違うの? どちらも学名は同じ Lavandula angustifolia(真正ラベンダー)。それでも香りが違うのは、育つ土地の気候や環境が違うからです。同じ品種のぶどうでも、産地によってワインの味が変わるのと似ています。 実は当店では、両方のラベンダーの成分を分析しています。その結果を見ると、世間で言われる「フランス産が上、ブルガリア産が下」という単純な話ではないことが分かります。 香りの穏やかさを作るのは、リナロールや酢酸リナリルといった成分。一方、シャープさや清涼感は、カンファー(樟脳)という成分によるものです。 ブルガリア産は、このカンファーがごく控えめ。だから、角のない、まろやかで穏やかな香りになります。 フランス産は、ラベンダーらしいフローラルの主成分が豊かでありながら、カンファーをはじめとするハーブ的な要素も含みます。だから、フローラルでありながら、すっきりと引き締まった香りに仕上がります。 どちらが上ではなく、それぞれの個性。両方を実際に分析し、扱っているからこそ、自信を持ってお伝えできます。 「産地」は、実は目安にすぎません ここまで「ブルガリア産」「フランス産」と産地で分けてお話ししてきましたが、正直にお伝えすると、"産地"という分け方は、あくまで目安です。 以前、イギリスのコッツウォルズにあるラベンダー畑を訪れたことがあります。そこで驚いたのは、隣り合う畑なのに、香りがはっきり違ったことでした。理由は、畑ごと、栽培する人ごとに、育てているラベンダーの品種が違うから。同じ土地、同じ気候でも、品種が違えば、香りは変わるのです。 つまり、「フランス産だから必ずこう」「ブルガリア産だから必ずこう」と、きっちり線を引けるものではありません。産地はあくまで、香りの傾向をつかむための、大まかな目安。最後は、実際に嗅いで選ぶのがいちばんなのです。 私たちが両方を店に置き、一つひとつ香りを確かめて選んでいるのも、そのためです。...